患者・家族の会 懇談会

~胃がん患者と語る~

「丸山ワクチン患者・家族の会」初の、患者さん同士の懇談会を、2008年5月12日に開催いたしました。卵巣がん患者13名にそれぞれの体験をお話いただき、ホームページと小冊子でもご紹介しました。
その後、患者さんからのご要望もあり、今回胃がん患者の方6名と消化器外科がご専門の江上先生の臨席のもと、2 回目の懇談会を開きました。
「卵巣がん患者と語る」同様、ご闘病中の患者さん、ご家族や友人・知人の方、医療に携わる方、皆さんに読んで参考にしていただけたら幸いです。

日時 2008年12月11日(木)14時~17時
ワクチン療法研究施設会議室
出席者 胃がん患者A~Fさん 6名
上記6名が、がん治療を受けた主な医療機関
大学病院
  東京女子医大病院:1名
  日本医科大学附属病院:1名
公立病院:1名
准公立病院:3名
江上 格医師(元日本医科大学消化器外科教授 現阿伎留医療センター参事)
岩城 弘子医師(ワクチン療法研究施設)
南木雅子(丸山ワクチン患者・家族の会)
丸山晶子(NPO丸山ワクチンとがんを考える会)

胃がん患者懇談会を開くにあたって

岩城医師

皆様、寒い中、ようこそお出でくださいました。
お体の悩みを抱え、なるべく早く懇談会を開いてほしいとのご要望もあって、年末のあわただしい時ですが、今日お集まりいただくことになりました。
ワクチンについては、長期に使用されて非常に調子がいい、経過がいいという方もいらっしゃいますが、まだそれほどでもない、あるいはまだ2、3年という方もいらっしゃいます。 ご体験を順番にお話いただいて、現在気になることがありましたら、江上先生にご質問されてもいいと思います。

江上医師紹介

南木

それでは江上先生をご紹介いたします。 先生にはNPO「丸山ワクチンとがんを考える会」主催の第5回講演会でも講演していただきましたが、元日本医科大学の外科の教授で、消化器がご専門です。 初めての方もいらっしゃると思うので、自己紹介していただきましょう。

外科医として- がんはとてつもなく広い

江上医師

私は外科が専門で、聴診器を使って診察する時代に大学を卒業し、その後次々と出る診療器具あるいは新しい技術の中で育ち、40年ぐらい外科医をやってきました。
がん全体の80%は、消化器あるいは一般外科が責任の診療科で、抗がん剤治療も、内科や腫瘍内科の先生が担当するようになったとはいえ、まだまだ多くは外科がやっています。
がんの情報は今一般にもたくさん出ていますから、患者さん自身のほうが、医師である私よりよく知っていることもあると思います。
胃がんと言っても、百人百様、抗がん剤にしても、薬だけの問題ではなく、がんの問題、患者さん自身の体も各々が複雑ですから、ひとりひとり違ってきます。がんはとてつもなく広いということです。
ですから、「なるほど」「私もそうだ」ということと、「私は全然違うな」ということもあって、今日の懇談会のように患者さん同士がお互いに話をするというのは非常に有意義なのです。
全国的にもこういう集まりは多いですね。
がんが見つかる。多くの方は手術をする。退院する時、「無事に退院できて良かったですね」という言葉はあっても、つらい思いをして手術したにもかかわらず、「治って良かったね」というような言葉はないんですよね。 手術したからといって、治ったことにはならないからです。 その後、治った可能性が高いかどうかを、経過、年数で推し測ることになりますから、非常に長期間、いろいろな意味で悩む時期が延々と続くわけです。
それから以前と違い、いわゆる治ったとみなされる方が非常に多くなりましたので、今度は、年齢を重ねて、「第二のがん」の発生がまた心配になってくるということがあります。
検査するとギョッとするぐらい大きいがんがあっても、圧倒されるほど積極的でお元気な方もいれば、またその逆の方もおられる。 手術後年月もたって、検査しても何も出ない、担当の先生からも「もう治ったと見なしてよいでしょう」というような話があるけれど、ご自分ではあれもこれも心配で悩む、という方も少なくありません。

がん患者の様々な悩み

江上医師

手術して通院中の人で、悩んでいる人が全国的には今400万人ぐらい。
どのような悩みがあるかという行政の調査の研究班に、私も加わりました。1992年に行なわれた同様の調査に比べるとかなり大規模な調査で、その結果を調査報告書として冊子にしました。
悩みにはいろんな種類がありますが、一番は体の悩み。 自分と同じような人がいるということがわかったり、その人と接することができると、ちょっと気分が楽になる。
「がん相談」というような窓口もあって、「何科にかかったらいいんでしょう?」とか、「どこの病院に行ったらいいでしょうか?」という相談はできても、「こういう精神的な悩みがあって」と窓口で相談することは難しい。
そういう場合は、静岡がんセンターのホームページに*『web版よろず相談Q&A』というのがありますから、そこをクリックしてみてください。 「あ、私これだな」と思い当たることもあるかもしれません。
そういうこともやっていましたということで、自己紹介にさせていただきます。

それぞれの体験

Aさん (63歳 スキルス性腺がん III期  2006年1月手術 約3年経過 抗がん剤2006年2月より*TS-1を2週間服用  丸山ワクチン歴2006年3月より2年半強)

元気だけが取り柄の私に突然の病魔

来年(2009年)の1月で丸3年たちますが、元気だけが取り柄だった私に、突然スキルス胃がんとの宣告、2006年1月に手術で胃を全摘、石が見つかった胆嚢も摘出しました。
1か月後病理検査の結果が出まして、35個取ったリンパ節中2個にがん細胞があるということで、抗がん剤の使用を勧められ、それならやったほうがいいだろうということで、TS-1の服用を2月から始めました。
1週間目から吐き気と下痢がひどく、見る見る体重が落ちていったんですね、食べられないものですから。 それで2週間後の診察の時に、「体力が消耗し過ぎるので抗がん剤はやめたい」と申し出ましたら、先生も「そうだね、君は無理そうだね」ということで、すぐに中止になりました。

抗がん剤で激減した体重がワクチン開始で食欲とともに回復

私の衰弱ぶりを見て、離れて住んでいた娘が、4月から一緒に住む決断をしてくれたものですから、TS-1は一時休んで、同居したら今度は違う抗がん剤を始めようということにしていました。
そうしましたら、友人が丸山ワクチンに関わりのある愛知県の渡辺先生と連絡をとってくれて、「すぐに丸山ワクチンをしたほうがいい」ということで、3月の初めからワクチンを開始しました。
さらにラッキーなことに、ホスピス医の山崎章郎先生がすぐ近くに診療所を開設され、注射を引き受けてくださったので、週3回A、B交互に打ち始めました。
丸山ワクチンを始めてからあっという間に食欲が出て、10kg近く落ちていた体重が7kgぐらい戻りまして、それからは順調に来ております。
丸2年たった去年(2007年12月)、*ビタミンB12欠乏による悪性貧血の心配があり、メチコバールの注射を週1回、合計3回受けました。

肝臓転移が心配です

今年に入って初めて、マーカー値*CEAが4.4、*CA19-9が46.6と正常範囲を超えたということで、要注意と言われました。 その直後に痛みを感じて診察を受けましたら、*消化液の逆流ということで、膵炎の予防、膵臓の壊死の予防のためのお薬を1か月ほど服用したら痛みも治まり、マーカー値も正常に戻りました。
ところが、8月の半年ごとの定期検診で、MRIで肝臓に影が見つかり、「ひょっとしたら肝臓転移かもしれない、胃から転移した場合は全体に散らばるので、まず手術は難しい。その場合は抗がん剤を使いたい」と先生から言われました。
10月のエコー検査では、「1つだけだから、手術も不可能ではない。転移であれば手術しましょう」と言われています。 その後も1か月ごとに超音波検査を受けていますが、「はっきりしないので様子を見よう」というで、来週定期の血液検査、来年の1月にMRI、CTを受ける予定になっております。
今一番の心配は肝転移なので、今まで週3日だった丸山ワクチンの回数を増やし、土日も含めA、Bを完全に1日置きにしております。

岩城医師

あの時はAさん、大分心配なさいましたよね。2年ぐらい何でもなかったのに、急に肝臓で見つかったということなので、ワクチンが効いてくれなかったのかなと思って、私もショックでしたね。
先程は肝転移かどうかはっきりしない状態というお話でしたね。
Aさんはっきりと転移が認められた時の対処の仕方というんでしょうか、それをお聞きしたいのですが…?

Aさん

はっきりと転移が認められた時の対処の仕方というんでしょうか、それをお聞きしたいのですが…?

江上医師

白黒はっきりして、白のほうだったらいいけど、結果が黒だとちょっとがっかりですね。今、CTとかMRIとか画像診断が非常に進歩していますから。
今のAさん、顔の表情も顔色も、とても病気をお持ちというふうには見えないですね。周りの方もそう言うんじゃないかな? 病人らしくないというのは、すごくいいことだと思います。 多分今は、体のほうにもあまり障害がない。どこか最近になって具合が悪いというようなところはないですね?

病気が進んでもマーカー値が正常というのは?

Aさん

やはりちょっと疲れやすかったりはしますけれども、でも、食欲は落ちていません。
今はマーカーも落ち着いていますが、ただ、私が非常に不思議に思うのは、手術前(2005年12月)非常に病気が進んだ状態なのに、血液検査ではCEAも2.0、CA19-9も23.6で、非常に低く正常範囲だったのは一体どういうことなのか、それが不思議なんですね。

江上医師

手術直前に正常で、その後上がったんですか?

Aさん

今年の1月、初めて正常値を超える値に上がりました。 CEAが4.4で、CA19-9が44.6に。
その後また下がりましたが。

マーカー値はがん以外の原因でも上昇します

江上医師

そうじゃないかなと思って聞いたんですけれども。
マーカー値は、ほかの良性疾患でも一時的に200、300に上がることがあります。 反対に病気が体中に広がっていて明日をも知れない状態の人でも、全く正常範囲だという方もいます。
あなた自身の値がどのような経過で動いてきたのかを見て、それが指標になるかどうかが判定できるわけです。 そういう意味では、Aさんの場合、例えば「病気が明らかに証明された」「CT検査で肝臓に大きいものがあった」というようになった時に値が上がっていなければ、多分上がらないんじゃないかと思います。 そうするとそのマーカー値が、病状を表わす指標にならないということです。

岩城医師

今日のご出席者は*未分化がんの方が多いのですが、「未分化の場合にマーカー値が上がりにくい」という話も聞いたことがあります。その点はどうなんでしょうか?

江上医師

どのくらいという数字は出せませんけど、そういうことはあると思いますね。

岩城医師

Aさんの場合、腫瘍マーカーの種類を変えてもらったら、また何か違うかもしれませんね。

江上医師

Aさんは最初に手術した時にはステージIIIですけど、3年経ちましたから、今は再発の可能性が低くなったなというタイミング、今が瀬戸際だな、出るならもう出ますから。
お元気そうにしているから、出ないんじゃないかな? もし出たとしても、タイミング的にも、手術後半年とか、1、2年以内という場合は非常に厳しいのですが、3年たってお元気でいるので、出たら出たで「そうかな」というぐらいに受け止めて、落ち込まないように。
それにいきなりもう1、2、3か月とかいう極端な話じゃなくて、少し手を尽くせばその治療に反応する、あるいは、あれこれやっていくうちに余命もそれなりに期待できますから、例え悪いほうになっても、それなりに自分の生活を楽しむこともできるのでは。
なかなかそう冷静にはいきませんでしょうけれども。

Aさん

最後寝たきりになる、そういう期間をなるべく短くしたいというのが希望ですね。
主治医の先生から、最初は「再発したら手術はできない」、次に「肝臓の影は1つだけだから手術できる」、その後「1つで済まないかもしれないから、あまり慌てないでね」とも言われましたので、そのつもりで様子を見ていこうとは思っています。
ただ抗がん剤、特にTS-1は余りにも衰弱がひどかったものですから使いたくないと思っています。

自然に任せるのが一番、自分で決められることではないので

江上医師

担当の先生が言われたのも私と同じ意味だと思いますね。取り乱すようなことがないように、今のうちに少し釘を刺しておくというような意味で。
Aさんはずいぶん先の、いざというような時まで考えているようですけれども、それはやっぱり神様がお決めになることだから、いつかはわかりません。
ただぎりぎりまで元気にしていて、俗に言う『ピンピンコロリ』を、皆さんお望みのようですけれど、それは望まないほうがいいね。(笑い)
例えば、「外に出た時にちょっとつまずいて、そして車にはねられて…」というようなのがピンピンコロリ。それは、非常に凝縮された苦痛を味わうと思います。 ですから『生老病死』、自然に任せるのがいろいろな意味でいい。例え病状が進んでも、「そういう状態になったかな」と受け止めていただければ、あまり取り乱さないですむと思いますし…。

私も胃がん患者です

江上医師

実は私も、手術で胃を全摘しました。 達観したようなことは言えませんが、同僚に内視鏡をやってもらって、自分でも見て、「この状態でいきなり死ぬことはなかろう、最低でも3か月、6か月はあるから、身の回りのことを整理をする時間はとれるな」と考え、医者としてその日の診療を普通にやっていました。
それに、『死』はね、体験した人は誰もいない。わからない世界だから不必要に怖がってしまうのだけど…。 私も大勢の方を見送りましたが、のたうち回って苦しんでお亡くなりになる方はいませんね、皆さん穏やかに亡くなる。 だからその心配はあまりしなくていいかな。 それより「今日の晩ご飯、何にしようかな?」というのはお考えになって。 その先はいいから。
病気のほうでは、Aさんは非常に恵まれた状況にあります。 手術時の進行状況だと、半数以上の方が亡くなられているか、その兆候がもう既に出ています。 今そんなにお元気だということは、かなり選ばれた状況ですね。

どれだけうまく病気を乗り切れるかに尽きますね

江上医師

いろんな治療をしますから、数字で表すのは難しいんですが、いわゆるI期、早期でも、5年以内 になくなられる方が数%、3年以内にお亡くなりになる人もいらっしゃるわけです。
逆に、転移がある方でも、今は大体8%ぐらいが5年生存ということですから、末期の人のほうが勝っちゃう場合もある。 スタートは「早期で万歳」と片方は「末期でガックリ」、それが途中で追い抜くこともあるわけで。 これだけでもがんが非常に複雑なものだということを理解していただけるんじゃないかな。
講演会でも話しましたが、『長生きする末期がん』もある。 5年生存はもちろん、がんと一緒にその人の寿命を全うする人も出てきちゃうわけです。 これといった治療ができないのに、あるいは、丸山ワクチンだけでという方もおられる。 だから、結局、病気をどれだけうまく乗り切れるかということに尽きると思います。

Bさん (66歳 *スキルス胃がん 1996年4月手術 12年半経過 術後約2か月間抗がん剤*フトラフール服用 漢方 丸山ワクチン歴1997年1月より12年)

スキルスがんで何よりも嫌いな手術を受けることに

私は12年前に突然何の予告もなしに、未分化のスキルス胃がんと言われました。 スキルスというのは、固いという意味ぐらいの知識しかなく、病気の恐ろしさも何も知りませんでした。
外科の先生からは、「まだこの程度なら手術は必要ないという話も出ているから」と慰められたりしたんですが。 私はとにかく手術がすごく嫌だったのですけれど、結局せざるを得なかったんですよね。

漢方やMMKなどもトライしたが、何年間もずっとSSMだけに

それでも手術の翌日には、「もう回復期だ」と自分に言い聞かせて、娘たちの前で、ちょっとはしゃいだりしたこともありました。
丸山ワクチンは週3回、A、Bを交互に、しばらくたってA単独に、その後週1回のA単独投与になりま した。 ワクチンを使うようになってから元気が出て来て、それまで全くどこにも出かけなかったものですから夢中で海外旅行にも行くようになり、そうすると10日ぐらい間が空いちゃうんですね。 それで、自然に今は10日に1度です。
手術後は娘たちが心配して、お水、漢方、あとMMKですか、コールタールのようなお薬をスプーンで朝夕飲んだりもしたんですけど、今はもう全くSSM(丸山ワクチン)一本で何年も来ています。
このままずっといくんじゃないかとすごく自信を持っているんです。

岩城医師

Bさんは初診が1997年の1月、スキルス性の未分化がんで広範囲の胃を切除ということですが、ここで言っていいですか、どのぐらいの大きさか? (Bさん肯く)110x76mm、すごく大きいんですね。

Bさん

次のお誕生日はないってことを、本人以外は全員知っていたんで、ものすごく優しくされたんですが、自分で丸山ワクチンを申し込みに来た時に受付で開封し、書類が不備で返されたんです。
「どこが?」と思って千駄木の駅で広げて、スキルスの絵が描いてあるのを見たら、急に駅が冷凍庫みたいにシーンと感じて、「ただごとじゃないな」とその時初めてわかったんです。
だから、むしろ私は知らないほうが良かったなと。

岩城医師

でも、きちっと対応して来られましたね。 普通、割合早くワクチンを始められるんですが、Bさんは手術後半年以上過ぎてからで、その間に比較的マイルドな抗がん剤を1種類…。

Bさん

そうなんです。フトラフールというマイルドなのにしていただいたんですが、副作用で足の毛細血管の先が斑点のように出てくるんで、先生が「それじゃやめましょう」と。抗がん剤は2か月間程かな?
丸山ワクチンは、娘たちがとにかく何でもやってくれと言うので。

江上医師

でBさんも、顔の表情というようなことだけで言うのは、ちょっと非科学的に思われるけれども、顔を見るとすごくいい。 手術時にはずいぶん大きいのがあったようですが、手術後の後遺症があったとしても、それをうまく乗り切られていると思います。 12年ですか? 日常生活にも特別不自由はないと思いますけれども。

ワクチンをやめようかと思ったこともありますが

Bさん

江上先生も手術されたと伺ってぐっと身近に感じました。
私も12年経過して、検査は半年ごと、1年に1回胃カメラと、車検みたいに必ず受けています。 「もう、完治でいいんじゃないか」と思って水を向けるんですが、先生がなかなか、そうは言ってくれません。 「本当に適切な手術をしていただいて…」と毎回申し上げるんですが、返事はなしです。(笑い)
10年以上続けているから、きっと私の体は丸山ワクチンで満杯だから大丈夫だと思っていますけれど。 実は10年目にワクチンをやめようかなと思ったんです。 病院で待たされて、1回1,500円払って注射してもらうって、結構負担だし。
でも、こちらで「一度病気をしているので、ワクチンは予防のためにお続けください」と言っていただいて。 今の江上先生のお話とぴったり合いました。 元気で経過年数を重ねていくと、今度は年齢的に本当のがん年齢になる、ということですね。

元気そうに見えますが、自分ではがんばっているんです

Bさん

でも、やっぱり死ぬのは仕方ないと思っています。
私、長い間、趣味で文章教室に通っているんです。前は明るいものを書いていたのに、病気後最初に書いたのが、『メード・イン・ヘブン』。 お世話になった人にお礼を言いたいとか、すごくじめじめした文なんです。
最近は夢でも全部『=イコール死』、何を書いても死に結びつく、そうなってしまうんですね。 受容を通り越したというか、「死んでもいいんだ。 だってひとりで何百年も生きているわけにもいかないし、死ななきゃしようがないもんね」と。 今は何かそんな気持ちです。哲学的ですけど。

江上医師

今、がんでお亡くなりになる人が大体半数。従来は、ほとんど全員亡くなりました。
私が若い頃は、診断が今と比較にならないぐらい非常に貧弱で、診断を下されたら2、3か月でしたね。 来た時にはもう全員末期がんです。今は、既存のほかの病気に比べると、CTなんかではっきりしてしまうので、どうしても病気を意識しがちになります。
いろんな意味で、究極的な極限状態を哲学的あるいは文学的に本に書いている方もたくさんおられますから、Bさんもいい作品が書けたらいいなと思います。 出版記念会かなんかあったら、ぜひ呼んでください。(笑い)

Bさん

夫にも、「再発したらもう今度はがんばらないからね」なんて、ちょっと罰当たりなことも言ったり、家族にはずいぶん心配かけて。 それが一番つらいですね。 あとは、体が痛くても、痒くてもどうしようもないんで。
「すごく精神的に元気だね」と言われるんですけど、本当は元気じゃないんです。 がんばっているというのがよく自分でわかるんです。

治療や検査は費用対効果も考え、体調を重視して選ぶ

江上医師

気持ちが揺れるでしょ? 自分でもわかるでしょうから、「今日はどっちの日かな?」、「だめな日だ」と思ったら、その日はそういうように過ごし、いい日もありますから、その時は「人が変わったようね」と言われたら、「そうなんです、変わったんです」と病気に捉われないで過ごしていただく。(笑い)
生活習慣病みたいにいろいろ厳しい制限も言われますが、そんなに厳格にする必要はないと思います。当たり前に楽しく生活する。
検診も、高い検診すれば長生きできるわけじゃないから、適当に。 女性なら女性特有のこともありますし。 検査はつらいかつらくないか、医療費も高いから、それに見合うかどうか。 「健康にはお金を惜しまない」と言うけど、要するに無駄金は使わないほうがいい。 それをやると「相当いいな」というのであればいいんですけれども。
検査の間隔も、「3年に1回」と「3か月に1回」とどっちがいいか?という話になるんですが、「間隔が短ければ病気が進まないうちに見つかるから、相当効果的」という意見もありますが、検査期間をあまり詰めるとろくなことがない。 マイナス面も多い。 普通、内視鏡で1年に1回、腸はもう少し間隔を置いて2年とか。 便の潜血、あるいは尿の検査は、それは排泄物ですから、費用が安かったらどんどん検査してください。(笑い)
採血は、量は大したことないけれども痛い。 でも年齢が上がれば、がんも、ほかの病気も出てくるから、狙いをつけたもの以外も、自分の体調を見るという意味で調べるほうが効果的だと思います。

Bさん

私すごく胃カメラ上手で、頭の中で大好きな歌を3番ぐらいまで歌っているうちにすっと終わって、もう1回やってもいいくらい。

江上医師

もう既にそういう域に達しているのかな。でも、1日に何回やっても早く見つかるということはないです。(笑い)

岩城医師

「胃の内視鏡は1年に1回、大腸なら2年に1回」ということですが、がんの細胞分裂は、胃がんのほうが大腸がんに比べると速いので、胃がんは割合頻繁に検査するということでしょうか?

江上医師

検査の間隔は、大体そういうことで決められるようです。 胃の検査ではBさんのように患者さんにも名人がいるようですが、大腸はドクターが名人じゃないと。危険もありますからね。
そういう意味でも、あまり必要以上に間隔を詰めないほうがいい。

Cさん 体調の維持とストレスとのバランスが課題です
(53歳 スキルス胃がん II期 2006年4月治癒切除手術  2008年1月腹腔内転移手術抗がん剤初回術後 TS-1を3クール、再手術後*ドセタキセル腹腔内投与とTS-1内服その後*シスプラチンとTS-1 漢方 2年8か月経過 丸山ワクチン歴 約2年)

自覚症状はとにかく物が詰まる感じ

膨満感や腹痛、嘔吐、便秘だとか、とにかく物が詰まっている状態が続いて、大学病院に行ったら、胃の噴門部のがんで、2006年1月に手術しました。 胃の2/3切除、リンパ節転移はなくステージIIとの診断でしたが、スキルスで未分化型細胞がんということでした。
術後、「予防的に抗がん剤をやったほうがいい」と言われて、4月からTS-1を3クールぐらいはやったんですが、結構副作用が出て、倦怠感も強く、5月から復帰した仕事にも支障が出始めたので、抗がん剤はやめ、その後は定期検診を受けるという形。 東洋医学外来に通い漢方もやっていましたが、友達の勧めで、秋から丸山ワクチンを始めました。

腸閉塞の疑いで手術したら腹腔内転移でした

小康状態が続いて定期検診でも異常はなかったんですが、今年(2008年)の1月に再発しました。
昨年末から便秘や腹痛がひどく、検査しても数値には出なくて。主治医から下剤をたくさん出されたんですが全然効かず、かえって腹痛が増すという状態が続いていました。
*腸閉塞ということで緊急入院したら、腹腔内転移で、腸の外側から腫瘍が圧迫して狭窄状態になっていたということでした。 ちょっと手遅れかなという感じで、腸をバイパス手術でつなぎました。リンパの転移は無かったのですが、ステージIVと言われました。
退院後、化学療法を勧められ、ワクチンの先生にも相談し、当初は*ポートをつけてドセタキセルを腹腔内に直接注入するのを月に2回、それとTS-1の服用。 やっぱり副作用が非常に強く、食欲不振とか、白血球値が下がって下血するとか、下痢が続くとか、腹水がたまったりとかで結構ひどかったんですね。
その頃に、丸山ワクチンは*A、Aの連続投与に変えて、現在もA、Aの連続、毎日やっています。
改善できないまま、今年6月にもう一回再入院。 とにかく食べられなくて、もともと53kgあった体重が1度目の入院で10kg減り、さらに34kgにまでなって。ガスも腹水もたまって下痢も続き、閉塞の傾向が強いということでの再入院でした。 どうにか腸の手術はしないで済み、食べるのはお楽しみ程度で、点滴が中心、2週間で退院しました。
抗がん剤はシスプラチンを5週に2回、TS-1を3週間飲んで2週間休薬、という形に変えています。 栄養剤の点滴は毎日1,000cc、週2回訪問看護婦さんに針の交換などをしてもらっています。
抗がん剤だけでは非常に不安で、自己免疫力を高める必要を感じて、どちらも両立させて治療をしていきたいということがすごくあったので、副作用がない丸山ワクチンの連日投与のほか、漢方と、帯津先生のところでホメオパシーでレメディーというのをやっています。
退院後2か月ぐらいは体調が戻らず、体重も増えず、輸血もしたんですが、9月の半ばから何かすごく調子が良くなり、今体重が42kg。食欲もあって食事がとれ、食べると下痢の繰り返しというのも大分減って、腸が動き出したと感じられるようになりました。 丸山ワクチンの先生からも『良い傾向』と言われ、落ち着いています。

死への不安より生活の変化による不安感が強いんですが

仕事は1月から、病欠から休職という形でずっと休んでいます。 体調が良いと極力外に出たりもしますが自宅中心の生活で、ひとりで自宅で過ごすことに慣れていないせいか、職場に戻りたいという気持ちも出てきて、逆にストレスがたまってきます。 今後、その辺と体力との関係をどうしていくのかなというのが課題ですね。
お話を伺っていて、とても参考になりました。本とかテレビとか情報はたくさんあっても、よくわからないというか、感覚的なところでもつれちゃったりするので、こういう機会があると助かるかなと。 先生たちからお話を聞くことはあっても、患者さん同士の話はないですし。
実は父も同じスキルスで亡くなっているので、スキルス胃がんと言われた時も、情報検索すると「とても怖い」とか、「そんなに長くもたない」とか、そういうことばかりが先に出ているので、今日出席して「ああ、がんばっている方もいらっしゃるんだな」と思って、すごく力になります。

Aさん

私も3か月だと思ったから整理しましたよ、本当にね。

Cさん

「やらなくちゃいけないことをちゃんと整理して」とかいろいろ思うんですが、日常に紛れて淡々と過ごしちゃって、何も準備してきていない、というのが実態なんです。 「それはそれで仕方がない、そうなる時にはなるし」みたいな感じで受けとめているんですが。
死ぬということに対してもちろん不安はありますけど、どちらかというと、生きている間の不安感というか、病気で生活が一変してしまったことへの不安感のほうが私の場合はすごく強くて。 健康でしたし、健康体の人ばかりの世界で生きていたのが一変してしまったことに対する精神的なストレスは強いという気がします。

江上医師

そうですか。ご家族は何人ですか?

Cさん

ひとり暮らしです。姉が近くにいて助けてもらっていますので、ひとりだと言うと姉に怒られますが。

ひとりでこもらず、人とふれあい、できることを楽しんだら

江上医師

ひとりというのは、いずれにしても不安感が強くなるからね。
お見受けしたところ、Cさん、それなりに日常生活は全部自分でできるんでしょうしね。
お姉さんとは仲いいでしょう? ちょっと不安感があるとか、何かあったら、電話するのも、行って顔を見て話すのもいいね。 お姉さんのお子さん、もう大きいのかな? 赤ちゃんとか幼児に接するのも良いと思います。

Cさん

はい。 実は、子どもと接する仕事をずっとやってきたんです。 仕事も、遊びもするというタイプでずっと生活してきたから、結構あちこち出歩いたり、旅行にも行ける時は行ったりしてますから。

医師の治療方針が自分の考えに合っているかどうかは大事な問題

江上医師

20年ぐらい前は、まだまだがんの告知もないような時期で、その頃は肝臓に転移なんかすると、医者のほうも大体見放すという状態でした。 家族に納得してもらい、痛み止めと眠剤を出して、体が自由なうちに精一杯できる範囲のことをするように勧めました。
病気というのは捉えどころがないところがあるんですが、患者さんにとっては、食事ができないとか、おなかが痛くてしようがないとか、そういう障害が一番問題なわけです。
「CTで大きなのがある」というのは、医者が患者さんに、ちょっとプレッシャーをかけようかなと思った時に言うくらいだから、「そうかな」というふうに捉える。ただ、体に障害が出てくるとやっぱり大変ですね。
Cさんは、2006年に1回目の手術をされて、2回目が今年(2008年)1月、腸のほうで手術された。手術で楽になる場合も、困難になる場合も出てきますからね。
後で話があると思いますが、Fさんも悩んでいて、A先生は「手術する」、B先生は「そんなのしちゃいかん」と。 意見が分かれている場合は、効果が確定的でないというふうに捉えて、その先生がその患者さんをどう治療していくかという考え方、医者は『治療方針』と硬い言い方をしますけれど、Cさんの考えと一致したところで考えていただいたほうがいいと思いますね。
それで、今後のことは、Fさん流に「最後はやっぱり神様がお決めになる、自分で決められるのは元気なうち。 だからあまり欲張らずひと月。 ふた月は大丈夫だなと思ったらふた月更新、それから先は考えない。 そして、そこを越したら次のひと月をこんなふうに生活していこうかな」と考えていくとよろしいかなと思います。

岩城医師

ちょっとだけ追加させていただくと、ワクチンを使われている方のうち、最初の診断がスキルス胃がんIII期、IV期で、手術した人のうち、「きれいにとれました、治癒切除です」という方と「治癒できない手術、残してしまいましたよ」という方が6:4ぐらいの割合であったと思うんですけれども、中には10年以上、長い方は35年以上、ワクチンを主として使われ長生きされてる方もいます。 男女別では、女性のほうが経過が良かったですね。ワクチンを長く続けた人が多かったということがありました。
良い情報ですので、ちょっとお知らせしておきます。(末尾「丸山ワクチンを使用された胃がん患者さん126例について」参照)

Dさん 腸閉塞への恐怖でびくびく暮らしています
(70歳 胃がんIV期 2005年胃切除 胆嚢摘出手術 3年半経過 抗がん剤TS-1を2年9か月服用 腸閉塞で3回入院 丸山ワクチン歴3年半)

ひどかった術前の胃痛、術後抗がん剤の副作用

3年半前のことなんですが、胃痛がひどく、我慢して胃酸の薬を飲んでいたんですが、ある日タール便に驚いてすぐお医者さんに行って、胃カメラをやって、「あ、胃がんですよ」と言われました。
その日が誕生日だったんですけど、すぐに手術になって胃の2/3と胆嚢を切除しました。 リンパ節転移もありステージIV。 抗がん剤が必要と言われて、「どうしよう」と思いましたら、看護師さんから「丸山ワクチンというのがありますよ。 入院患者さんにもやっている人がいますよ」と聞いて、退院してすぐ自分でここに来て、ワクチンをいただくようになりました。
抗がん剤は1か月後からだったので、先にワクチンのA、Bを隔日1日置きに打っておりました。
TS-1を1日100mg 服用し始めましたら、ものすごい副作用で、下痢もおびただしくて。
ワクチンをA、Aの1日置きに変更していただきましたら、大分楽になりました。 その後TS-1を1日80mgに減らしてもらったら、さらに楽になり、2年9か月服用しました。
ワクチンのおかげで副作用が大分軽減されていたんじゃないかと、その時に実感できました。 その後の検診で、やっと抗がん剤をやめる許可が出て、ひたすらこちらのワクチンで暮らしております。

腸閉塞での入院3回、またいつ起こるか、手術をするのかが心配

ところが、術後にありがちな腸閉塞に見舞われ、10月の初めに3回目を起こして、救急で入院しました。 「開けてみなければわからない」と、手術を勧められたんですが、体力も落ちていたので待ってもらったんです。
鼻からイレウス管というんですか、チューブを入れるので、食事はもちろん、水も飲めないんですね。 点滴だけで1か月、入院中の1か月半は何するわけでもなく、ただ「歩きなさい」と言われるまま、チューブと点滴をぶら下げて、病院内をふらふら歩くだけで暮らしておりました。
「腸閉塞はいつ起こるか、どういうふうに注意したら防げるかわからない」とお医者さんがおっしゃるんですよね。 そう言われたら、いつも入院用のバッグを作ってスタンバイしているしかないですね。
ですから今のところ、半年ごとの検診は一応パスしているんですが、腸閉塞の恐怖で毎日びくびくして暮らしております。

江上医師

腸閉塞で手術したことはあるんですか?

Dさん

ないです。 鼻管を入れて、その間1か月半はずっと食べないで。 小さいものですが、痛くてもう耳までじんじんして、つばも飲み込めなくなる…。

江上医師

私も先月、入院して鼻管をやりましたのでよくわかります。 さんざん患者さんにやりましたし、自分もやっぱりやってもらいましたけど、以前は腸閉塞はすぐ手術されちゃいましたが、今は余程じゃない限り手術しない。 いわゆる『吸引療法』、内科的治療で良くなりますから。
1か月半食事できなかったというのはどういう状態だったのかな?

Dさん

最初2週間で退院して、帰るともう次の日から痛くなって再入院したので、全部で1か月半なんです。

江上医師

そうでしょうね。大体今2週間ですね。
私は「療養は自分でやるから」と言って1週間で退院させてもらったんですけれど。
ただ、退院して1か月、できれば3か月は準備期間です、腸が細々とやっていますから。
「どういうような食べ方?」と聞かれますが、細かく言うと切りがない。
要は『だましだまし』、これに尽きると思います。
Dさんの場合、手術されるというようなことはないと思いますが。

Dさん

「今度入院したら手術だよ」と言われてしまっているんです。 だから、絶対腸閉塞を起こしたくない。

岩城医師

実を言いますと、入院中のDさんからお電話がありまして、「先生から手術を勧められ、明日までに返事するように言われた」ということで。困っちゃうわけですよね。

江上医師

「次回手術します」というのは、普通はありません。 注意を喚起するために、脅かしの意味で言ったのかもしれません。 先程言ったように、「回数が多いから次は手術だ」ということは必ずしも言えないんでね。 逆に言えば、今まで吸引で治っているんだから、「やっぱり切ってください」とDさんが望めば別ですけれども。

Dさん

そうですか。 「手術してもまたなる」とも言われたんで、「じゃ手術しないでがんばりましょう」と思って。

術後の癒着による腸閉塞なら、ほとんどが吸引療法で

江上医師

詳細がわからないので断定できませんが、基本的には内科的吸引療法で良くなりますし、入院は大体2週間ぐらいです。 退院後は『慣らし』が要りますから、特に最初のひと月。 その後もちょっと気をつけて、あまり大事にしてもいけない。 家での食事も重湯ぐらいから始めて、外にも出て、ちゃんと歩いて、というようにして療養していただく。

Dさん

最初の入院時に失敗したので、次の時はすべてゆっくり、管を入れている時間も長くしたので、すっかり腸の調子が狂っちゃって、今度出なくなっちゃったんですね、下剤をいっぱい飲んでも。
毎日下剤に頼る生活で、それまではTS-1で下痢ばかりしていたのが、今度出なくなっちゃって、苦労しているんです。

江上医師

便通不整も、手術の後遺症として少なくないのです。私の場合は手術しないで寛解、良くなりました。
Dさんの場合は癒着性のようですが、2005年の7月の手術で、翌年8月と11月に腸閉塞様症状があったということですね。 最初の腸閉塞は術後1年ぐらいだね。 極端に早期でもなさそうだし、手術は1回もやっていないんですね、腸閉塞に関しては。
今年の7月で3年になるね。「次、腸閉塞起こしたら開腹手術しますよ」ということの意味、ここだけの話でちょっと声に出して言いにくいのですけれども・・・。

Dさん

ぜひ聞きたいです。

江上医師

こう言うと聞きたくなるんですよね。(笑い)
原因は、先程癒着と言いましたが、経過からいってもそうじゃないかなと思います。 原疾患(胃がん)との関連がどうかは、CTとかではなかなかわかりません。 そうすると「開腹してみるとわかる」というのもある。

Dさん

「開けてみなければわからない」とおっしゃっていました。
「癒着しているからループができて、これが『くるん』となっているのかどうか? わからない」と。

江上医師

ひどい閉塞があったら、吸引療法で食事再開はできません。
今みたいにお元気で食事は極端に制限していないということなら、吸引で良くなっていると思います。 だから、おなかの養生、あまりかわいがり過ぎてもだめ。 やっぱり少し鍛えてあげて、子どもだと思って厳しくやったりね。 歩いて運動すると腸の運動にもなりますから。
ちょうど3年、様子からも、原疾患が転移したという可能性は低いと思います。

Dさん

もう3年半、CTでも、がんのほうの心配は、一応今のところないようです。

江上医師

CTの結果も確率の問題で、蓋然性では低いですから。
次回も起こったら、メスを持って追っかけられちゃうかもしれないけれどもね。(笑い)

岩城医師

Dさん、ものすごかったですよね、あの電話の時。 「もう、すぐどちらかに決心して」と言われたって。
どうもその先生と折り合いが余りよくないということですね。

先生への信頼感が腸の調子を良くする

江上医師

それが一番問題だな。

Dさん

質問すると叱られる。怖いんですよね。 「一生僕と付き合うんですよ」と言われているんです。 いつまた再発するかわからないわけですよね。

岩城医師

ひとり若い先生がすごく優しくしてくれて、その時とても良くなられたんですね、Dさん。(笑い)

Dさん

「手術を待ってください」と言ったら、その若い先生に託されちゃったわけですよ。 その時はすごく幸せだった。

江上医師

冗談じゃなくて、「この先生だな」という先生に診てもらったら、腸の調子良くなりますよ。
脳と腸は両方向から関係していますから、嫌だなと思った先生に会えば、ギュウッと腹が痛くなる。
幸せなほうがいいじゃない。

Dさん

次に外来に行ったら、また、元の先生に戻っちゃって、だから、また緊張して…。

腸閉塞や便通不正の予防はまず食事、そして運動、薬は最後

江上医師

医者も、患者さんに甘いだけではだめだから、厳しいことも言わなきゃいけないということがあるかもしれません。 苦手な先生には、「あなたの代理の先生はちゃんといるよ」というところも見せて、使い分けたらよろしいんじゃないですか?
腸閉塞の予防は食事療法に尽きますし、お通じは出なかったら浣腸してもいいし。
薬の量を増やせばいいというものじゃないですよ。

Dさん

手術前に飲まされた下剤を、ちょっと減らすともう便秘が2日になっちゃったり、増やすと今度は出過ぎちゃう。 こんなことを続けるのって、心配だなと思って。
腸が下剤に頼っちゃっているのは、どうなんでしょうか?

江上医師

お薬よりも、質問をメモしていって、食事方法をしっかり訊いてくる。
同じ薬でも、時期によっても、食べたものによっても効果が違いますし、今日の診察がいい先生か、怖い先生かによっても、もう変わりますからね。 あまり神経質にならず自己調整していただいて、このぐらいでこの程度だと大体わかればいいわけですから。 薬の量に捉われないほうがいいと思います。
まず食事、それから体を動かすこと、そしてお薬、そのぐらいの順番でちょうどいいかな。

Dさん

そんなことばかりが頭にあって、何だか1日過ぎちゃうんですよ。

江上医師

そうですね。それが頭にあると捉われちゃいますから。 そうかといって、侮っちゃいけないんです。 夫婦の関係も同じですよね。(笑い)よけいなことを言って失礼しました。

TS-1の服用法を変えて副作用軽減

岩城医師

Dさんは、TS-1の副作用が大変強かったので、『続けて2週間飲んで1週間休む』飲み方が合わないのではと思い、『5日飲んで2日休む』という方法を提案いたしました。

Dさん

そうでした、それを忘れてました。 岩城先生にご相談して、飲み方を変えたらそれから大分楽になりました。

岩城医師

外科の先生は専門外なので飲み方まではあまりおっしゃらないかもしれないですが、文献に違う飲み方も載っていますので。 最初は5年飲むよう言われていたのですよね。 その間に2回、腸閉塞を起こされて。非常に激しい口内炎などもありましたよね。

Dさん

爪はぼろぼろになるし、潰瘍はできるし、大変な副作用があって。

岩城医師

胃がんには確かにTS-1がよく効きますので皆さんお使いになりますから、このお話をさせていただきました。

Eさん 抗がん剤も放射線も使わず、いろいろな療法を取り入れています
(48歳 胃がんIIIb期 2005年幽門側胃切除手術 術後化学療法 放射線共になし 3年半弱経過 丸山ワクチン歴3年半弱)

胸の痛みが病気の予兆?

2005年8月に幽門部の胃がんで、胃の2/3とリンパ節切除、胆嚢の摘出手術をしました。
以前から胃は痛かったんですけれども「出産の痛みと比べたら大したことはない」、タール便もずっと出ていたんですけれども「ただの消化不良だ」と思って、なかなか病院には行きませんでした。
その1年程前から鎖骨から2番目の胸の骨の辺りが杭を打たれるように痛くて、病院でCTを撮ったりしたんですが、胸だけで胃のほうまで検査はしなかったので、なかなか胃がんとはわかりませんでした。
胃がんと自覚したら、不思議と胸の痛みはなくなり、胃の痛みだけになりました。

激やせするのが嫌で抗がん剤治療は拒否

先生から抗がん剤治療を勧められた時、「あなたの場合は激やせします」と言われ、激やせは絶対嫌なので、「何と言われても、どんなに勧められても抗がん剤だけは断わる」と断固拒否しました。
丸山ワクチンは主人がネットで調べたり、同じ病室に以前ワクチンを打たれていた方、ずっと続けていた方がいらしたので始めました。 6週間の入院中、後半の2週間は丸山ワクチンをしながらの入院でした。
ほかにも主人が漢方薬とかいろいろ調べて、中国のPPQを毎日1本飲んだり、AHCCというキノコの薬もしばらく続けました。
現在は、ミネラル水と、酵素に、食事はニンジンジュースと野菜中心の玄米菜食。 毎日1時間半程ビワの葉温灸もしています。

3年経過しましたが、ワクチンは週2回でいいですか?

丸山ワクチンなんですけれど、週3回も通うのがついつい面倒なのと大変なのとで、勝手にAとBとで週2回にしてしまっているんですが、それでいいのかちょっと心配なんですが?

岩城医師

基本的に治療として考える場合は、週3回は最低限なんですね。本当は5年ぐらいはやっていただきたいんですけれども。
「初期のがんできれいにとり切れ、治癒切除です」という方は、3年ぐらいで、週2回に減らしますが、お年を召した方には、「特にこれからががん年齢で、次のがんも出てくる可能性があるので、お続けになったらどうでしょうか」と言っています。
「転移があったり、特にIII期、IV期の方」には初めから「5年間、1日置きが望ましい」と。それじゃなければだめだということではないですけど。
Eさんは、手術時にとったリンパ節29個中に4個がん細胞ありとなっていますからちょっと要注意。
週2回はまだちょっと早いかなと思いますが、いろいろな方がいますので。
ワクチンの注射代が、先程お話が出てちょっとびっくりしましたが、すごく高価なところがあるんですね。回数が多いと結構負担ですね。

南木

ワクチン注射は自費診療ですから、注射代は医療機関によって違います。 ただし、治験薬ですので混合診療にはならず、保険診療との併用はできます。

5年生存率はIII期で9%?

Eさん

以前NHKの「ためしてガッテン」で、III期だと5年生存率が9%と言っていたんですけれども、そうなんでしょうか?

江上医師

Eさんの場合、IIIb期とあるから、9%はちょっと低い。 倍ぐらいはあると思いますよ。
手術は2005年8月ですか。 そうすると、3年過ぎたところですね。 少し気を許せないところはありますが、まあ大山は越えた。大体大丈夫。

Eさん

そうですね。 死亡率は100%ですので、いつ死んでもいいようなものの、子どもたちがまだ中学生と高校生なので、お弁当を作ってあげなければいけないし、ふたりの受験が終わるまでは生きていなくちゃいけないかなと思っています。
自分が必要とされている間は生きていたいんです。 それが過ぎたら、世の中に必要とされる方々はともかく、ただ長生きすればいいというもんじゃないとも思っていますが…。

江上医師

いや、お子さんからまだまだ必要とされているからこそ、やりがいがある。 私は子どもが好きだから、産むのはできなかったけど、子育てはしました。 子どものためというのは、素晴らしい。

Eさん

でも一番幸せなのは猫といる時のほうで、猫は本当にかわいいと思うんです。 動物を飼うようでしたら猫が。散歩も要りませんし。 猫を抱いていると本当に世界一幸せだと思うんですよ。(同感という声)

江上医師

だめか!(笑い)

始めに手術後の治療の情報も詳しく教えてほしかったのですが

Eさん

がんになって、手術前にお医者様が説明してくれるのはもう手術のことばかりで、それ以外は何も一切なし。 手術後どうなるということとか、抗がん剤とか、最初に教えてほしいと思うんです。
入院は2週間と言われて、実際には6週間だったり。
お医者様にとっては患者は山のようにいますし、いつものことなのでしょうが、でも手術を受ける側、患者としては初めてのことなので、もっと詳しい情報をきちんと最初から説明していただけたらと…。

江上医師

そうですね、大きい流れを説明すべきでしょうね。 だけど最初の手術が終わるところまでは、これは先程の治療方針の話になるんですが。今はガイドラインもあっていろんなことがわかってきたので、「あなたの場合はこの治療をすると、おそらくこうなるでしょう。 それを超えないと先へ行けない」ということで、あまり先の話をしていないんだと思います。
だから、退院時には、一応一段落つきますから、先行きの話もきちんとしていただくというふうに、患者のほうから切り出すということでもいいと思いますけどね。
Eさんはもうそれをかなり過ぎて3年経っているから、ある程度めどはついた。
もう少し経過を見て、それで病気がまた出てくるかどうかということでしょう? それは可能性は低いけど、否定できない。 5年たっても可能性はわずかですがあるわけですから。
そのぐらいになると、再発がんなのか、第二の別がんなのか? 女性だと婦人科のがんが出るということもあります。 あなたは、ぼつぼつそういう段階に入っているというふうにお考えになってください。
医者は、ほとんど元のがんしか診ていないと思います。 なかなかがん以外のいろいろな病気のすべてに気を配って診るというわけにはいかないのでね。 患者さんのほうは、頭の先から爪先まですべて診てもらっていると勘違いしている。 勘違いというか、ずれがある。 だから、患者のほうから、関係ないかなというようなことまで話した上で、「それは婦人科に行きなさい」とか、「耳鼻科に行きなさい」とかをきちんと答えてくれるかどうかというのも、その先生を評価する基準になります。 Eさんも、そういう節目の段階かなと。

抗がん剤も放射線もしなかったことが、結果として良かった?

岩城医師

Eさんはワクチンだけのようですが、抗がん剤などは全く使っていないのですか?

Eさん

全く使っていません。 ミネラル水とか、自家ワクチン療法だけ。

岩城医師

治癒切除にはなっていますが、IIIb期の方が手術だけで、抗癌剤や放射線を使わないでうまくいったというのは、副作用のため抗がん剤を2週間しかお使いになれなかったAさんとも似ているわけですね。

江上医師

体が内から知らせたのかもしれないな。 「それじゃもたない」と体が言わせたのかもしれないね。 結果的に非常に良かった。

岩城医師

良かったですね。 私だったらその決断はできないかもしれないなと思いながら、お聞きしていたんですけれどもね。

Eさん

あと、自家がんワクチン療法。自分のがん細胞からワクチンを作って、それを注射で打ちまして…。 筑波に研究所があり、私は千葉の聖隷佐倉市民病院でやってもらってます。 今はちょっと貧血で鉄剤は飲んでいますが、健康だと思っています。

Fさん がんの縮小と再燃を繰り返していますが、2か月単位で人生を設計しなおしています
(64歳 胃がん*低分化型腺がんIV期  2007年発症 リンパ節、肝臓に転移あり手術不能 抗がん剤TS-1と*トポテシン併用6クールで休止 肝転移再燃のためTS-1再開 ドセタキセル併用 シスプラチン*肝動注 *塞栓術 *パクリタキセル(タキソール) クレスチンも使用 1年半経過  丸山ワクチン歴1年半)

いきなり余命3~6か月の宣告

1年半前(2007年)の6月30日、胃の辺りがとても痛くなったので、地元の総合病院で精密検査しました。胃に2つのがん(野球のボール大1個とウズラの卵大1個)、リンパ節に1つ、肝臓にも合計5つ(鶏卵大1個、ピンポン玉大1個、うずら卵大3個)ありました。
先生に「本当のところを知りたい」と言ったら、「未分化か分化かでも違うけれど、治療しなければ(あるいは薬が効かなかったら)、早くて3か月、もって6か月でしょう」と。
最後の1か月は寝たきりになったとしても2か月はあるから、「しめた、自分のやりたいこと実現する時間がある」と思いました。

がんの縮小と再燃を繰り返しています

検査の後、地元の病院から日医大病院に移り、トポテシンとTS-1を使用。同時に丸山ワクチンをA、Bの1日置きで打ち始めました。
半年後の12月に、胃がんは小さいほうが消滅し、長径7.2cm(野球のボール大)が3.2cmに、肝臓に5つもあったのが4個消滅、残った1個も0.5cmに縮小し、リンパ節のは消えていました。
次が約1年経過した今年の7月。半年で胃がんは3.2→4.0 cmと若干大きくなり、肝臓のは0.5→8.9 cmと急速に増大し、更にもう1つ0.9 cmのものも。そして見えなくなっていたリンパ節のは2.3 cmに。
それで、肝臓の大きくなったところにカテーテルを入れ、シスプラチンの動脈注射をして、7月下旬に退院しました。 続けていたTS-1の副作用で、ものすごい食欲不振と倦怠感。
あまりにもつらいため、8月末には、主治医に「余分なことはいいから、死ぬ前の日まで元気で、歩いていたい。ベッドの中で1年、半年生き延びても生きがいがない」と伝え、「友達と会い、お世話になった人に自分の足で行って感謝の言葉を述べて、それで自分はこの世を去って行きたい」と決意しました。
決意したせいかどうか、2か月後の9月、胃は半分の2.0cmに、肝臓とリンパ節のも、また小さくなりました。 そして、昨日(12月10日)の内視鏡で胃とリンパ節は9月とほぼ横ばい。 ところが、エコーやCTを見ると肝臓のは大きくなっています。
ということで、8月末よりTS-1の量と回数を減らしてもらい、「タキソールの点滴を毎週1回、合計3回やって、来年1月の下旬に入院、またシスプラチンの動脈注射でやっていこうか」という主治医の提案を受けて、今日もタキソールの点滴を終えてきたところです。

がんは、ボウフラみたいなもの

がんになって入院して以来、自分の気持ちや治療中考えたことを日記に書き、テープレコーダーにも録音しています。がんで悩んでいる人に伝えたいし、家族に書き残したいんです。
そこで考えました。がんは汚れた水に湧き出るボウフラみたいなものだと。抗がん剤でたたいたって、一時的には死んでも、汚い水からボウフラが出るように、また出てきます。だとすれば、ボウフラが出ないような水の環境、つまり体づくりをすればいい、と。

がんが発生しにくい体を作る

運動、食事、ストレスなど、いろいろあります。私が考えたのは、

  1. バランスのいい食事と、40回、30秒間噛むこと。「何を食べてもいい」と言われていますが、栄養の8食品の中から、家内の糖尿病食を参考にして、バランスの良い食事をしています。
  2. 適度な運動。雨の日以外は朝10分間の乾布摩擦。それからスクワットを30回。呼吸器系が弱いんで、「やり過ぎたら危険よ」と岩城先生に怒られましたんで、セーブしながらやっています。
  3. 感謝の気持ち。看護婦さんから「こんなにありがとうを言う人はいない」といわれるほどいっぱい言う。 うれしいし、ありがたいから全ての人に、物に、事に対して自然に「ありがとう」が出てくる。
  4. 日々笑うこと。孫と一緒に、「元気、元気、あっはっは」と朝昼晩何回も笑う。

ひとりでも、元気じゃなくても、TS-1の副作用で食事が出来なくても、私はやってます。

体重減少もプラス志向で

4kgあった体重が20kg減って54kgになりました。この3か月間だけは横ばいですが。
体重が減り、運動して、20年ぶりにエスカレーターを使わずに階段で上れるようになりました。
33歳の時から飲んでいた高血圧の薬も、血圧が正常になり、先月ついに止められました。
全てがんになったお陰です。さらに女房や孫たちとも旅行できます。だから今、人生を最高に謳歌しています。

体力が落ちている今、手術に挑戦すべきかまよっています

丸山ワクチンは最初A、Bの1日置き、今年の4月から、日曜祭日を除くAの連日に変え、現在に至っています。
今がんがここまで小さくなったので、「手術をしたほうがいい」というお医者さんと、「肺気腫と喘息もあり、体力面の心配があるので手術以外の治療を続けましょう」という主治医。
TS-1もそうは飲めないし、手術のリスクはどうなんだろう、あるいは第三の方法があるのかどうか、ということで悩んでいます。江上先生からもアドバイスいただけたら、と思っています。

江上医師

今日のハイライトみたいだね。
でも、一番大切な、いわゆる病気との付き合い方では、Fさん以上の人を見つけるのはなかなか難しいと思いますね。 厳しい状況下で実際に実行されてきて、そういう境地に到達したのだと思いますけれども、すごい。
お続けになってください。
今、手術を受けるかどうか、いろんな意見が出ているということですが、当然意見は分かれます。
Fさんは治療の効果については極めて恵まれています。大幸運だったんです。 わずかな期間で、注射と飲み薬だけで大きな腫瘍は消えた。 どれほど幸運かというと、100人に1人ぐらいの幸運です。

Fさん

ああ、なるほど。じゃ、宝くじを買います。(笑い)

江上医師

結構いい率で当たるんじゃないかと思います。(笑い)
「手術しない、あるいはできない」という場合で、「技術的に困難でとれない、摘出できない」というのも一部あります。 Fさんの場合は、体の状況、肺のほうの問題もありますし、手術することの利益がどの程度保障されるかということです。
まずは無条件で、すなわち体の負担にほとんどならないということであれば、意見が分かれるということにはならない。 無条件というのはあり得ないから、意見が分かれちゃう。
ただ、もし肺の具合が良かったら、100%みんな手術を勧めるかというと、そうでもないですね。
病気のほうでも、どうしても大きい病巣に目がいきますけれど、リンパ腺にもある。 画像診断という数値の検査で出る、出ないというよりも、最初からある程度の大きさがあって、今でもあるのが問題。 当然、ほかの部位、ほかの臓器にもあるという可能性が高いですね。
「総合的に判断するとどうなのか?」ということになります。

体力と気力の維持は、治療効果につながる要素

Fさん

自分では相当元気だと思っているのですが、TS-1服用中だけは、仕事で1日に3時間、ちょっと根を詰めると、疲れてどうにもならない。そういう意味でもすごく体力は落ちているなと思いますね。

江上医師

そうですね。 一番わかりやすい指標は体重。あなたは手術していませんが74kgから54kgに落ちた。それが一番わかりやすい消耗度ですね。
手術だけじゃなくて、放射線を当てても、体重がガッと10kg、20kg落ちます。 体は手術と同じぐらい消耗した。現在もそれが進行しているということです。 もともと相当な体力があったのである程度の効果が出ているということで、その体力なしに、薬だけが効いたわけではないですよ。 体力維持はあなたの責任範囲で、それが薬以上に効果的だと思います。
それなりにお元気なのですが、画像では間違いなく形として出ている。 ちょっとどぎつい言い方すれば、死が迫るとか死に直面するというような感じを持つようになると、どうしても非常に確率の低い治療法も試してみたいという気持ちが強くなるんですよ。 これは避けられません。 それは必ずしも間違っているということではなく、それより、あなたの決断しだいです。 多くの方が手術に挑戦したいと思うようになります。 それが生きる力ですからね。心のパワーがあるからできるということです。
お送りいただいた詳細な資料も拝見しましたけれども、私からどっちがいいということはちょっと控えさせていただきます。

丸山ワクチンで、がんと共存しながらいきるという選択

Fさん

いずれにしても、長く生きられるなら生きたい。かといって、無理して長くにこだわってはいない。
「がんだよ」と言われてから入院するまでの10日間、まず最初に、葬式に使う写真を撮ってきました。 一番格好いいのを残したいじゃないですか。
会社を2つ経営していましたが、がんのことは伏せてあいさつ回りをし、会社の書類も整理。 また、看病のことや葬式の方法も伝えました。もう、いつ死んでも安心です。
この間の講演でも、さっきの江上先生のお話でも「なるほどな」と思ったんですが、「まだ、必要であれば生きられるはずだ」と。 自分が決めるんじゃなくて、やっぱり天が決める、神が決めると思っています。
手術も、初めは全くできない最悪の状態だったのが、現在可能性としては出てきた。 でも、「可能性にチャレンジしたいという気持ち」と、やっぱりこれだけ肺気腫とかぜんそく持ちで、それでなくたって今、すぐゼイゼイしちゃうという状況で、「手術後に抗がん剤を使って治療していったら、もたないだろうな」という思いのほうがものすごく強いんですね。
だったら、丸山ワクチンでがんと共存しながらいくのが、ワクチンがどれだけ効くか私にはわかりませんけれども、きっとベストな選択なのかな?
がんが小さい大きいではなくて、自分の現状を冷静に見詰めて、一日一日を大切に生き、人生を燃焼していくことが大切じゃないかと思うんですね。
実は講演で、江上先生が本当に神様のように見えたんです。 今日その江上先生、いつも熱心にご指導いただいている岩城先生にお会いできまして大変嬉しいです。 ありがとうございます。
それから、病院に行く時は先生への質問をワープロで打ったり、書いたりしていくと、忙しい先生も答えやすいし、時間がない時は次回に詳しく聞くこともできます。 ご参考までに。

江上医師

まさにそうですね。医者とうまくかみ合うように、患者さんの側でも、ちょっと工夫してコミュニケーションを上手にとれば、気持ち良く通院できると思いますね。

岩城医師

大分時間超過になりましたが、皆様方のお役に立てるようなお話がきっとあったのではないかと思います。
長い時間、ありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎えください。(終)

用語解説

*スキルス胃がん

粘膜表面に広がらず胃壁内に浸潤するため、内視鏡で発見されにくい。診断時、転移を伴う場合が多い。スキルスとは「硬い」という意味で、進行すると、繊維化して胃全体が硬くなる。

*未分化がん

細胞が様々な組織に分化していく程度が未熟で、元の細胞の判別ができないがん。進行が早い。胃がんの場合、がん細胞がばらばらに胃壁内に浸潤し、腹膜転移しやすい。

*低分化型腺がん

消化器など分泌組織に生じるのを腺がんと言う。細胞の分化度が低い低分化型は増殖が盛んで転移もしやすい。

*CEA(腫瘍マーカー)

がん胎児性抗原。消化器がん、肺がんなど多くのがんで検出。肝硬変などでも上昇。 基準値5.0ng/mL以下。

*CA19-9(腫瘍マーカー)

糖鎖抗原。すい臓がん、胃がん、胆道がんなどで検出。 糖尿病、肝炎などでも上昇。基準値37U/mL以下。

*胃がんの化学療法

TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)
混合薬剤。日本で開発された代謝拮抗剤。 5-FUに、効果を持続させる薬剤と副作用を軽減する薬剤を加えた経口抗がん剤。進行がん、再発がんの第1選択薬に用いる。血中の5-FUが高濃度に維持されるが副作用も多い。
通常1日2回、28日間連日経口投与、14日休薬で1クール

フトラフール(一般名テガフール)
代謝拮抗剤。 服用後、肝臓で5-FUに変換されて効果を発揮する。
主に内服。注射もある。

タキソール(一般名パクリタキセル)
イチイの樹から抽出したタキサン系抗がん剤。細胞分裂を阻害。骨髄抑制、末梢神経障害等の副作用。 点滴静注。1回投与後3週間休薬で1クール。ウィークリーもある。

ドセタキセル(商品名タキソテール)
タキサン系抗がん剤。作用はタキソールと同じ。むくみ、白血球減少、脱毛、食欲不振などの副作用。点滴静注で1回投与後、3~4週間休薬。

シスプラチン(商品名ブリプラチン、ランダ)
白金化合物製剤。がん細胞のDNAと結合して分裂、増殖を阻害。適応範囲が広く、多くのがんで腫瘍縮小効果があるとされるが、副作用も強い。点滴静注。動注療法も。

トポテシン(=カンプト)(一般名塩酸イリノテカン)
トポイソメラーゼ阻害剤。DNAの分裂、増殖を阻害。骨髄抑制や下痢などの副作用が強いため、投与量を減らしシスプラチン、TS-1などと併用もされる。点滴静注。

ポート(リザーバー)
血管内に挿入したカテーテル(細い管)を皮下に留置し、必要に応じて体外から抗がん剤や高カロリー輸液を投与するための小器具。
またカテーテルを腹腔内に入れて、必要時に抗がん剤を注入。生理食塩水を注入・回収して、洗浄細胞診を行い、治療効果を判定することもある。

肝動注
肝動脈に挿入したカテーテルから抗がん剤を肝臓病変部に直接投与し、がんを壊死させる。効果を高めると共に、全身への影響を小さくしようとする局所化学療法。

塞栓術
肝動脈に挿入したカテーテルからスポンジ状の物質や薬剤を注入し、肝動脈をふさいで、栄養と酸素の補給を断ち、がん細胞を死滅させる局所療法。

*胃がんの切除手術後の障害

B12の欠乏による悪性貧血
ビタミンB12は胃壁で作られる糖タンパクと結合して小腸で吸収される。胃の切除により不足すると、貧血や神経障害などを起こす。メチコバール(ビタミンB12製剤)などを投与。

腸閉塞(イレウス)
腸の内容物(食べ物、水分、消化液、ガスなど)が、通過障害を起こした状態。痛みや嘔吐、便秘、発熱などを伴う。原因や病状の重症度、経過により、緊急手術を要する場合もある。
術後の癒着が原因の場合は、吸引療法(イレウス管という2メートルほどの管を鼻から小腸まで挿入し腸管内容物を吸引排出する療法)で改善することが多い。

消化液の逆流
噴門や幽門の切除により、消化液が食道に逆流し、胸焼けなどの症状を起こす。逆流性食道炎の原因となる。

A Aの連続投与
丸山ワクチンは通常(A)と(B)を交互に皮下注射するが、病状、経過により(A)単独、(B)単独を隔日、連日、1週に1度使用する場合もある。
静岡がんセンターWeb版がんよろず相談:https://www.scchr.jp/cancerqa/

丸山ワクチンを長期使用された胃がん患者さん126例について

日本医科大学ワクチン療法研究施設 岩城 弘子

2004年~2005年の2年間に丸山ワクチンを受領された胃がん患者さんのうち、(1)10年以上ワクチンを使用 (2)組織診断確定 (3)ステージIII~IV期の条件を満たす症例は126例ありました。
その詳細は、2006年7月22日「日本医事新報」に掲載されました。 その内容に基づいて、本懇談会の話題に関連する項目につき私見を述べたいと思います。

  1. 126例中、男女比はほぼ同数。年齢は50歳以上が3/4でした。
  2. 胃がんの場合、完治には治癒切除しかないというのが常識です。 この126例でも69例(55%)が治癒切除でした。残り57例(45%)は非治癒切除32、術後再発21、試験開腹3、手術不能1であり、治癒が難しいにもかかわらず、長期延命していることが注目されています。
  3. 病理組織上悪性度の高い胃がんのみで見ると、女性が男性より1.8倍多くなっていました。 スキルス胃がんが若年女性に多い傾向はありますが、丸山ワクチンが、この種のがんで男性より女性に効果的なのかどうか、引き続き検討を加えたいと考えています。
  4. 126例中70%が、手術直後の化学療法を行なっています。 しかし、ワクチン開始後も化学療法を併用した例は、治癒切除例で38%に、非治癒切除例等では1/4以下の23%に減少します。 体力的に抗がん剤使用が困難になり、副作用の無いワクチン単独使用に切り替えて延命につながったのではないかと考えられます。
  5. 診断確定後ワクチン使用開始までの期間が、3か月以内60%、4~6か月19%、約80%がワクチンを半年以内に使い始めておられました。
  6. ワクチン使用開始から10年以上、あるいは20年以上経過し、既に70歳以上の高齢の方も多いのですが、 PS(健康状態の指標)は、日常生活に支障のない0~1の方が86%です。 丸山ワクチンの長期継続使用がQOLの高い延命に寄与しているのではないでしょうか。

おわりに、[最長使用の1症例]をご紹介します。
調査時点で78歳の女性です。1970年7月、当時43歳であったこの方は、某国立大学病院で、胃腺がんの手術を受けましたが、すでにリンパ節と腹膜に転移があり、ステージIVでした。そのため非治癒切除に終わり、余命6か月との診断であったため、術後マイトマイシン治療をされましたが、副作用で中止。 術後半年の1971年2月に丸山ワクチンを開始。それからの34年間は丸山ワクチンのみで元気になられ、2005年2月時点でPS0、体重は初診時より7kg増加しておられます。 このような症例は決して少なくありません。
最近は長期に抗がん剤を使われる場合が多くなっていますが、そのため体力を消耗し、かえって悪化される例も少なくありません。
丸山ワクチン自体は全く副作用が無く、他の治療の妨げになることもありません。むしろ抗がん剤や放射線治療の副作用軽減も期待できますので、診断が確定したら、できるだけ早くご使用になることをお勧めしております。
※126例の調査の詳細は、NPO「丸山ワクチンとがんを考える会」ホームページ第2回講演会レポートをご参照ください。

  • あなたの体験談、
    お聞かせください。

    みなさまからの貴重な体験談を募集しております。